コラムレスベラトロールと耳の関係性
~レスベラトロールは騒音性難聴を軽減する~
はじめに
患者様の中に「耳が詰まる感じがする」「耳鳴りがする」などのお悩みをお持ちの方はいらっしゃいませんか?
上記の症状は騒音性難聴の症状のひとつかもしれません。
騒音性難聴は誰でも予防策をとることができ、職業によって起こるものでなければ防げると考えられています。
今回は騒音性難聴を軽減するといわれているレスベラトロールについてご紹介します。
難聴・聴覚障害者の現状
難聴を発症する年齢は様々で、すべての人が加齢に伴い難聴になるわけではないようです。
2018年3月、世界保健機関(WHO)は、高齢者人口の増大などで世界的に聴覚障がいに苦しむ人が増えており、2050年には推計約4億7千万人から9億人に達する可能性があると発表しました。
日本でも2008年の約500万人から、2018年では550万人に増加したと報告されました。
聴覚障がいの原因としては加齢のほか、はしか、水ぼうそうなどの感染症や結核などの治療剤による副作用を挙げられます。さらにスマートフォンなど携帯型のオーディオ機器で大音量の音楽を長時間聞くこともリスクの要因だといわれています。※(1)
日常生活の騒音で騒音性難聴に
騒音性難聴とは騒音の中に長時間いることで起こる難聴のことです。
別名を職業性難聴ともいい、病名からもわかるように職業柄、騒音にさらされながら仕事をする方が発症しやすい難聴のひとつです。
具体的に、建設現場や道路工事、鉄工所や印刷所、持続的に機械音がしている工場のライン、パチンコ店、ライブハウスなどで働く方、また音楽演奏家やパイロットなどが挙げられます。
また、趣味としてヘッドホンをつけ大音量で音楽を聴く、あるいはコンサートなどによく行かれる方にも発症の可能性はあります。※(2)
騒音曝露による難聴障がいは、難聴の全症例の約半分の原因を占めており、世界人口の5%が騒音と関連する聴覚障がいを引き起こしています。※(3)
ですが多くの人は、身体に影響を及ぼすような有害なレベルでの環境音の存在、または音が有害になるレベルを認識せず暮らしています。
有害なレベルの環境音の一般的な要因には、カーステレオ、子どものおもちゃ、自動車、群衆、電動工具、楽器、さらにはヘアドライヤーが含まれます。※(4)
騒音によるダメージ
騒音によるダメージは累積的であり、リスクを評価するには、すべてのダメージの原因を考慮する必要があります。
長時間大きな音(音楽を含む)にさらされると、難聴が生じやすくなります。
音の強さ(音エネルギー)は、音の発生源に近づくと劇的に増加し、音までの距離を半分にすると、音の強さは4倍になります。※(4)
騒音性難聴とレスベラトロールの関係
2020年3月に日本薬学会の研究では、レスベラトロール投与によって反復騒音曝露による聴覚障がいを軽減することが発表されています。
研究グループは、反復騒音曝露による感音難聴に対して、抗炎症作用を有するレスベラトロールが内耳保護効果を発揮するか否かについて検討しました。
研究の要旨によると、5-6週齢BALB/cCr雌性マウスに、騒音(8 kHz、90 dB)を1日1回、1時間聞かせることを、5日間続けました。
研究方法としては、レスベラトロール(50 mg/kg)を、初回騒音曝露の3日前から最終騒音曝露日まで1日1回、経口投与し、経時的に聴力を解析した最終騒音曝露1日後の蝸牛を摘出し、炎症性サイトカイン( Il1b、Tnf )の発現レベルをq-RT-PCR法により解析されています。
また、最終騒音曝露1日後にmyosinVIIa(有毛細胞マーカー)、CtBP2(シナプス前部マーカー)およびGluA2(シナプス後部マーカー)の発現を免疫組織化学法により解析し、聴覚求心路の初段階である内有毛細胞-蝸牛神経間シナプス数を解析しました。
反復騒音曝露は、曝露回数依存的、周波数依存的に聴力を悪化させたことと、レスベラトロール投与は、聴力の悪化を有意に抑制したことが結果としてわかりました。
また、反復騒音曝露は、Il1bおよびTnfの発現レベルを有意に増加させたのに対し、レスベラトロ―ル投与は、これを抑制しました。
反復騒音曝露は、内有毛細胞-蝸牛神経間シナプス数を曝露回数依存的に減少させましたが、レスベラトロール投与は、これを有意に抑制しました。※(5)
こちらは日本薬学会で発表された学会発表ですが、聴覚の維持や難聴の予防策としてのレスベラトロールの働きについてさらなる研究結果が期待されます。
レスベラトロールとは
レスベラトロールとは、サンタベリー(リンゴンベリー)やブドウなどに含まれるポリフェノールの一種で、強い抗酸化力を持ちます。
細胞の酸化を防ぎ肌の弾力を改善するなど、体を健康的に若々しく保つ効果が期待される成分として注目されており、サプリメントや化粧品などに使用されています。
一般的には美容成分として知られています。
レスベラトロールの摂取方法
レスベラトロールは、ブドウの果皮に多く含まれているといわれています。それ以上に多くの量を含む果物が北欧の森に自生する野生種のサンタベリー(リンゴンベリー)です。その実に含まれるレスベラトロールの量は、赤ワイン用のブドウとして栽培されるカベルネ・ソーヴィニヨンの2倍以上にもなることが明らかになっています。※(6)

ブドウをもとにして作られたワインにも、レスベラトロールは含まれており、とくに赤ワインに多く含まれています。ぶどうや赤ワインの他にも、ピーナッツの皮やアーモンド、ココアなどにもレスベラトロールは含まれています。
しかしながら、レスベラトロールを摂るために、これまでに挙げた食べ物をたくさん摂取することは、現実的ではありません。
高品質なレスベラトロールを継続的に効率良く摂取するなら、サプリメントを利用することも良い選択肢といえるでしょう。※(6)
まとめ
いかがでしたでしょうか?
騒音性難聴はヘッドホンをつけ大音量で音楽を聴くなど、日常的な騒音で発症することがあるとても身近に潜む病気です。
生活に気をつけたり、今からレスベラトロールの摂取を始めたりといった対策を早めにとることで、予防に良い影響を与えるかもしれません。
栄養の摂取やサプリメントの活用といった情報で、少しでも患者様のお悩みや不安を和らげる手助けになれば幸いです。
わかさ生活ではこれからも医療従事者の皆様にお役立ていただける健康情報を発信してまいります。
参考文献
- (1)日本経済新聞“4億7千万人が聴覚障害 WHO、世界で増加と警告”
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27667570T00C18A3CR0000/ - (2)めまい耳鳴り難聴サイト“騒音性難聴症状・原因について”
https://www.memai-kobe.jp/14773819883198 - (3)エリザベス・マスターソン博士、CPH、COHC“A Story of Impact….”
https://blogs.cdc.gov/niosh-science-blog/2015/03/25/hl-impact-story/ - (4)“老人性難聴と認知症リスク 難聴を改善する16の方法”アルツハッカー.2020/3/10
https://alzhacker.com/hearing-loss/ - (5)日本薬学会“レスベラトロール投与は反復騒音曝露による聴覚障害を軽減する” 第140回日本薬学会(京都)2020年3月25日~28日
- (6)わかさの秘密“レスベラトロール”2020/09/08
https://himitsu.wakasa.jp/contents/resveratrol/?soycms_pathinfo=seibun%2Fresveratrol%2F